710 解題:電気回路実験のねらい
この章は,実験を終えての解題として,本実験で学んでほしい目的やポイントについて,振り返りとしてまとめておく.
■本実験の目的
本実験の目的は3つある.
(1)電気素子$ R,C,Lと電気回路全体の特性を理解する
(2)回路の精度,測定精度について考える
(3)グループでの問題解決の進め方を学ぶ
これらを繰り返すことで,工学的常識,センスを身に付けることができる.
◎本実験で獲得するべき重要な内容を挙げておく.
(A)電気回路の基礎構成要素である電圧源,抵抗,インダクタンスとキャパシタンスを組み合わせ,パッシブ回路を作成する.
(B)回路の過渡応答特性と周波数応答特性について,回路出力波形をオシロスコープで観測・測定する.
得られた測定値をグラフ化する.
回路の振る舞い,現象を把握する.
回路理論の理解を深める.
(C)測定を通じて,実験データの精度・誤差について学び,データの有効桁数に対する感覚(センス)を養う.
※実験データの有効数字は2~3桁程度と言われるが本当か?
(D)各種装置・測定機器に慣れる
オシロスコープ
マルチテスタ
ファンクション・ジェネレータ
取扱説明書の読み方
計測時の注意事項:誤差,有効数字,計測系と被計測系の理解など
(E)実験科学的思考・技術を訓練する
グループワークによる問題解決
※「分業・協力」で時間価値を上げることの重要性
実験的アプローチの理解
※建設的な試行錯誤とはなにか?
記録データの整理,結果,評価,考察
※余分だと思えることも記録することの大切さ
報告書の作成
※細かく留意するべき事は多くある.特に考察は最重要
■進行の目安
実験の進行は,ゴールの把握から始まる.
グループ全員がゴールを把握する
→ やるべきこと/やった方がいいことを具体化
→ 作業を細分化して分担
→ 結果をリアルタイムに共有
という具合である.スムーズにいけば,以下のような進行になるだろう.
(1)(1週目前半$ LC直列共振回路の特性:
1.$ RC回路にLを直列に加え,周波数応答・共振現象を観測
2.最大振幅時の$ f_0を測定しLを求める
3.最大振幅比,半値幅$ \Delta fのそれぞれから$ Q値を求める
(2)(1週目前半)$ Q_0値100倍のプラン:
プランを裏付けする仮実験
(3)(2週目前半)$ LC直列共振回路の特性:の再計測
1.前回の測定を再度繰り返し,誤差を確認する
2.レポート作成を始める
※前回より精度良く測定する工夫が大切.
必要に応じて何度でも測定
(4)(2週目後半)$ RC回路,$ LC回路の過渡特性:
1.$ RC直列回路,および$ LC直列回路にパルス波を印加し,過渡応答特性を観測
2.$ Cの値と回路の時定数$ \tau($ RCとLCでは異なる)を求める
3.実験系の測定精度,誤差範囲について検討・整理する
※実験後:レポート作成 → 〆切注意
(5)(3週目:レポート指導)
1.報告書の訂正に必要なこと(再計測を含む)をする
2.必要なら追加実験を行う
3. 締切内に再提出
☆☆コラム★ 実験は作業が先か理屈が先か?☆☆
実験というのは手を動かさなくては進まない.
が,理論や目的をはっきりさせないと効率も落ち,精度も甘くなる.
だから背景になる理論をわかっておく必要がある.
しかし時間は限られるので要点をつかんでおき実験を進めながら理解する.
つまり,
1. 「走りながら考える」
2. 「時々立ち止まって振り返る」
3. 「考えをまとめるために手を動かす」
といった「ながら」で進めるのが,「実験的な態度」だと言えるだろう.
グループでは自分の脳内に生じたひっかかりや発見を,すばやく共有して見せ合うことで,「走りながら考える」を加速させることができる.
以上.
2024/4/8